お久しぶりです。
夏頃に、SNSで繋がっている洋書仲間さんから譲っていただいた『Wishtree』を読了したので、感想を綴ろうと筆を取りました。
実はこの本、中身は文字やイラストが多くとっつきやすいと思いきや、とても苦戦させられた1冊。
しかし内容はとても面白く、ウィットに富んだアカガシ(樹)とカラスのやりとりや、動物たちとの交流が魅力となる作品です。
『Wishtree』 katherine Applegate
2017年に児童書として初版が出されて以来、数々の受賞歴がある本作。
私の手元にあるのはハードカバーのタイプ。美しい夜空に浮かび上がるウィッシュツリーが描かれた表紙のものです。(2019年発売の表紙違いがあるみたいなので購入の際はご注意ください。)
あらすじ
樹齢200年以上ものアカガシであるレッドは、「ウィッシュツリー」と呼ばれていた。毎年5月1日には多くの人がレッドの元をおとずれ、願いを書いた布や紙を結ぶ。加えて、レッドはさまざまな動物たちの「家」でもあり、多種多様な動物の家族と共存する日々を送っていた。ある日、レッドの前にあるふたつの家の一方に住むイスラム教の家族に対して嫌がらせと捉えられるメッセージが。しかもそれはレッドの樹の幹に彫られてしまい……。
受賞歴の数に納得 優しさに触れられる名作
美しいイラストがたくさん散りばめられていて、文だけでなく目でも楽しめる1冊でした。
カラスや、動物たちの描写がとても可愛らしくて。とあるページにあるカラスの表情から大きな友情と愛を感じられてとても気に入っていたら、あとがきにもそのカラスのカットが。作者もお気に入りのカットなのでしょうか。暖かい気持ちになれるイラストにも注目です。
一方で英語のレベル的には、私にはまだまだ難しく波に乗るのにも時間がかかりました。何より文意が取れない、語彙がわからないのオンパレード。対象年齢は8〜12歳とあり、他に読了した本と変わらないのですが、樹の部位、品種、動物の種類など独特の語彙に悩まされてしまいました。
翻訳家の渡辺由佳里さんのレビューでも中級者向けとあったので、少し体力のいる本かもしれません。
ただ、根気よく語彙と戦える余力があるなら、絶対に読んで欲しい作品でもあります。なんせ、とても美しくて心温まり、子どもだけじゃなくて大人も優しい気持ちになれるのですから。
日々の殺伐とした暮らしで痛む心が癒えていくようなパワーを感じました。周り見て生きなきゃな、となんだか背筋が伸びる思いも。
加えて、移民に対する差別が作品に盛り込まれており、日本の児童書ではあまり触れられないトピックに触れるきっかけを作ってもらった作品でもあります。読み込むほどに気づくことの増える作品だと思うので、精読するのもおすすめ。
ここが見どころ
私の解釈があっているのかは自信がないのですが、主人公となるアカガシが「願い事を聞く」立場から、徐々に変化を起こそうとするところが気に入っています。起こさざるを得ない問題があるからなのですが、葛藤や限られた力の中で状況が変わっていく様子に勇気をもらいます。そして、願いを「聞く」ことと「叶える」ことは違うんですよね。なんとなく飲み込んでいたものの本質をふいに突きつけられるような、そんな内容なので興味深く読むことができました。
日本では、『願いごとの樹』というタイトルで偕成社から邦訳版が出版されており、付き合わせて読むのもいいかもしれません。表紙も原書を踏襲した美しい表紙のままなのが嬉しいですね。
まとめ
ご縁があって譲ってもらった本がこんなに優しい内容で、なお心が洗われる思いでした。
挫折しないで読めたのは、なんと言ってもSNSで繋がれている洋書フォロワーさんの力だなと。この本は、レッドに動物たちの家族が住んでいて、いわば「共存」しているのですが、私はなんとなくSNSにも似たようなパワーがあるなと思っています。
本には内容に出会えた喜びだけじゃなくて、「本自体」に出会える喜びがあるんです。たまたま書店で惹かれたり、すすめてもらったり、譲ってもらったり、好きなアーティストが読んでいたり……。作品への思い入れと、作品の良さで二重に楽しめるんだということを痛感しました。
実は他にもまだ読了本があるので、ゆっくり更新していきたいと思います。
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